ご存知の方も多いと思いますが、熊本を代表するゆるキャラ「くまモン」が「ゆるキャラ(R)グランプリ2011」で優勝しました。
「くまモン」は、2ヵ月ちょっとで28万票以上を獲得して1位になったわけですが、その過程は山あり谷ありでした。
商売柄、ITの観点で振り返ってみたいと思います。
■不正投票で一時騒然
まず前提として今回の「ゆるキャラグランプリ」の投票方法について。
1メールアカウントにつき1日1回、好きなキャラに投票できるというルール。すなわち、好きなキャラがいる人は毎日1票ずつ投じていくわけです。
面倒な登録などが必要なく、気軽に投票できるというメリットがあり、メールアドレスさえ持っていれば誰でも投票できるので、パソコンが無くケータイだけ、という人でも参加できました。
大会主催者も
「なるべく簡単に多くの方に投票してもらう為、メールアドレスのみで投票できる方法」(ゆるキャラグランプリホームページより引用)
を取ったとのことですが、そんな仕組みに付け込んだ人がいたのでした。
まず10月中旬頃、急速に票を伸ばしたキャラがおり、運営側が調査したようで、
2011-10-18 17:48:05
今回、複数のメールアドレスを自動的に生成して投稿する等の事例が報告されました。キャラクターを応援したいゆえの行為だと思いますが、行き過ぎと思える投票は事務局判断で無効にさせていただくことがございますのでご了承ください。
(ゆるキャラグランプリホームページより引用)
この時は注意を促した程度で納まりました。
そして11月下旬頃、また別のキャラクター「にしこくん」がありえない票数でトップに躍り出ました。これまた主催者が調査して、「機械的な投票」は不正票としてノーカウントにしました。
2011-11-21 11:41:58
フリーのメールアドレスを利用して、コンピューターで機械的に大量投票するケースが増えております。
緊急の措置として明らかに「度が過ぎている」17日から21日までの機械的な投票285,335票を無効にする措置をとりました。
(ゆるキャラグランプリホームページより引用)
「くまモン」が2ヵ月かけて獲得した28万票を、たった5日で集めてしまっています。
■不正投票って可能なの?
では、
「実際、不正投票ってできるの?」
と思われる方もいらっしゃると思いますが、はっきり言うと
できます。
プログラマーなどの専門職じゃなくても、ちょっとパソコンに詳しい人なら1日数百から数千回投票することは簡単かもしれません。
今回の場合、1メール1票なので、大量にメールアドレスがあれば大量投票することができました。
そこで活用されたのがYahoo!メールやGmailなどのフリーアドレス。これらは無料でいくつもメールアドレスを持つことができるサービスで、本来は、迷惑メール対策用に「使い捨てアドレス」として使ったり、仕事とプライベートでメールを使い分けたりするためのもの。
しかも1回の登録につき、Yahoo!メールなら最大10個、Gmailならほぼ無制限にメールアドレスを取得できます。そして1人が10回登録すれば、メールアドレスを100個以上作ることができます。
■インターネットの影響力は大きい
また「にしこくん」の場合、ネット上で「にしこくんを1位にしようぜ」と呼びかけあって、集団で投票を行なっていました。
同様の話が過去にいくつかあり、
・ポケットモンスター
2008年、映画「ポケットモンスター ギラティナと氷空の花束 シェイミ」に登場するポケモン9体によるネット投票で、最下位のポケモン「コイル」を1位にしようとした。(結果、コイルは2位に)
・イナズマイレブン
2010年、ゲームやアニメで人気の「イナズマイレブン」に登場するキャラクターのネット投票で、脇役の「五条勝」を1位にしようとした。(結果、五条が1位に)
・プロ野球オールスター
2003年、プロ野球オールスターファン投票で、右肩痛で登板のない川崎憲次郎投手を1位にしようとした。(結果、1位になったが川崎が出場辞退)
・TIME誌パーソンオブザイヤー
2001年、アメリカのニュース雑誌「TIME」主催の「パーソンオブザイヤー」(今年の人)のネット投票で、盗撮や覚せい剤所持などで逮捕歴のある田代まさしを1位にしようとした。(結果、ネット投票自体が中止に)
などの前例があります。
こういう騒ぎが起こると、どんな結果が出てもケチが付くから残念です。
くまモン優勝なら
「票が操作された」「出来レースなんだろ」
にしこくん優勝なら
「不正票なのに」「何でもありなのか」
という野次が飛ぶに決まってます。
実際のところ「くまモン」はがんばっていました。(いろんなイベントに参加したり、大阪出張したり…)
野次に惑わされず、真っ当な評価で優勝したと胸を張って、引き続きがんばっていただきたいものです。
- 「ゆるキャラ」という言葉は、みうらじゅん氏の著作物であるとともに扶桑社およびみうらじゅん氏の所有する商標です